ベテラン先輩がお休みのとある日、外来から右側腹部痛の患者さんのCT検査のオーダーが入りました。
うちの病院は造影検査はしないので(一応古いインジェクターはありますが病院の方針?らしい)単純CTで腹痛の精査です。
腹部から骨盤部まで撮影し画像を確認します。
(ざっと見た感じ何もなさそうだなぁ…)
とそこへ主治医がやってきました。
「何かあった?虫垂炎どう?」
「虫垂炎はなさそうですねー」と返答。
「わかったわー」と帰っていきます。
その後もう一度画像を詳しく見ていると…胆嚢周囲がモヤモヤと白くなってる気がする…!
胆嚢周囲の脂肪識濃度が若干上昇しているようでした。
これは…胆嚢炎の所見…?
そしてよく見ると胆嚢壁も若干肥厚しているかも…!
さらによくよく見ると胆嚢頸部あたりに若干白い領域が…結石まではいかないけど、胆泥とかが詰まってるかも?
これは胆嚢炎でほぼ確定だろうと思いつつも、どの所見もめっちゃ淡い…自信ないなーてことで外来へ行って血液データを見てみることにしました。
「すいませーん、さっきの腹痛の方、CTで胆嚢炎っぽいので血液データ見せてもらえませんか?」と看護師さんに問い合わせ。
すると「採血してないんです…」
「エッ…」
採血って基本するもんじゃないのか??どうなんだ??と思っていると主治医が診察室へ戻ってきました。
「先生、胆嚢周囲の濃度上昇があって…胆嚢炎が疑われます」と報告。
「胆嚢炎?じゃあエコーやって。あと採血。」
うわーエコー来ちゃったーと内心思いましたが仕方ありません。
この病院に来てから覚え始めた検査なのでまだ数回しかやったことがないエコー、緊張します。
患者さんをエコー室へ案内し早速胆嚢を見ていきます。
胆嚢壁肥厚…あるかな?うーん…軽度肥厚かな。
だけど胆嚢内には胆泥は確認できる!CTのあの淡い白い領域はやはり間違ってなかったのか!
総胆管の拡張は…なし!(総胆管の描出が苦手ですがこの時は見えました)
なんとかエコー検査終了。
エコー結果を提出しに外来へ行くと、採血の結果が出てきているようでした。
炎症反応あり、ビリルビン高値。
(よし、総合的に判断してこれは胆嚢炎だな。)
最終的に主治医も胆嚢炎と判断し、うちでは治療が出来ないので他院へ紹介となりました。
自分の所見報告から他院へ紹介になるなんて、紹介先で実は胆嚢炎じゃなかったなんてことになったら嫌だなーと密かに冷や汗をかきました。
その翌日、出勤した先輩にCT画像をチェックしてもらうと…
「CT画像だけでも胆嚢炎と言い切っていいくらいだね」とのこと。
そこまで自信を持てなかったなーと反省しつつも勉強になった一件でした。
そして本日紹介先の病院から連絡があり、胆嚢炎で間違いなく、保存的治療を行ったとの報告があったようです。
胆嚢炎で間違いなかったんだなとホッとしました。
前の職場では放射線技師が読影を求められることはほぼなかったので撮影したらそれで終わりでしたが、今の病院ではけっこう所見を聞かれます。
検査の件数自体は少ないですが、そういったところで今までとは違うプレッシャーがあります。
しかし自分の仕事の結果が診療に大きく影響していることを肌で感じられるので、それはやりがいに繋がっていてモチベーションも上がります。
業界の流れ的にも、放射線技師の所見報告はこれからもっと求められてくると予想されるので、しっかり勉強していかねばなりませんね。